第17回 ネットビレッジ(株)(2006年10月より(株)fonfunに社名変更)
株式公開は次世代で勝ち残るための通過点
取材先 ネットビレッジ(株)(2006年10月より(株)fonfunに社名変更)
所在地 東京都渋谷区笹塚2-1-6 笹塚センタービル 6階
e-mail info@netvillage.co.jp
URL www.fonfun.co.jp/
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株式上場・・・それは起業家にとって一つの目標である。平成14年9月19日(木)、今何かと話題になっているナスダック・ジャパン市場に八王子のある企業が上場を果たした。モバイル通信ベンチャーのネットビレッジ(株)である。創業わずか5年強での上場を実現。この快進撃の秘密は一体どこにあるのだろうか・・。 今回は現在八王子の中で最もノッている1社と思われるこの会社に訪問し、常務取締役の三浦 浩之(みうら ひろゆき)さんからお話を伺った。
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快進撃の秘密は『リモートメール』にあり!
ネットビレッジの得意としている事業は、パソコンでやり取りするEメールをそのまま携帯電話で送受信できる「リモートメール」というサービスである。こう聞くと「あのサービスか!」と思う人も多いのではないだろうか・・・? 実に33万人を越すユーザーが同サービスを愛用しているのだ。
リモートメールは文字数無制限の送受信、添付ファイルの閲覧、パソコンのEメールアドレスでの送受信等が可能であり、今やほとんど標準装備されている携帯電話のEメールを機能面で圧倒している。パソコンのEメールとほとんど変わらないメールのやり取りが携帯電話で実現されるので、わざわざ出張や旅行先に重いノートパソコンを持っていかなくても携帯電話でメールチェックが可能なのだ。しかも月額たったの200円である。
「手軽さ、便利さ、コスト面から、一般ユーザーだけではなく多くのビジネスマンにリモートメールを採用して頂いてます」と三浦さんは胸を張る。
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ネット上に村(ビレッジ)を創ろう!
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「『株式公開』というと順風満帆かに聞こえますが、決してそんなことはありません。実は当社は今まで波乱含みだったんです」と三浦さんは言う。 ネットビレッジの創業は平成9年3月3日。社長の飯田 祥一(いいだ しょういち)さんが、あの都市開発シュミレーションゲーム「シムシティ」等を手掛けているゲームソフト会社イマジニアから独立して設立した。イマジニアは昭和61年に設立され、平成8年には店頭公開を遂げている。同社の創業メンバーとしてこれらの一部始終を経験していた飯田さんは「いつかは自分自身の手で・・・」と独立チャンスを狙っていたそうだ。
折しも平成8~9年はインターネットが普及し始めていた頃。「ネットワークにビジネスチャンスがある!」と確信した飯田さんは、イマジニアを店頭公開するために助っ人として関連会社から派遣されていた三浦さん達と「インターネット上で巨大な村(ネットビレッジ)を創る」というビック・プロジェクトを掲げ、ネットビレッジを創業したのだ。 |
新たなインターネット・コンテンツの開発へ・・・
創業後すぐにネット上の村「ネットビレッジ」の大掛かりなキャンペーンが開催された。村への入居を一定期間無料にして募ったところ、かなりの入居者を集めることができた。まずは無難な滑り出しであった。
ところが、無料期間を終えて入居を有料化にしたとたん脱退者が相次ぎ、ネット上の村「ネットビレッジ」はたちまち立ち行かなくなってしまったのだ。三浦さんは「予想外の結末」と当時のことを振り返る。事業の失速からネットビレッジは創業直後に危機に見舞われてしまったが、この経験から「ネット事業で料金を徴収することは簡単ではない」ことを身をもって学ぶことができたという。
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その後、平成9年の中頃から日本高速通信(今のKDDI)のインターネットプロバイダー事業「しりうすくらぶ」や、トヨタ自動車の公式情報通信サイト「PiPit」等の企画・制作を次々に受託。ネットビレッジは事業を軌道に乗せると同時にインターネット・コンテンツ会社として着実に実績を積んでいった。
必要は最大の母―『リモートメール』誕生!
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平成11年2月、NTTドコモの「iモード」サービスが開始された。いよいよ携帯電話によるインターネット接続サービス時代へ突入したのだ。ネットビレッジはこれにいち早く目をつけ、インターネット・コンテンツ事業で今まで培ってきたノウハウを活かし、携帯電話向けのコンテンツ開発に経営資源を集中させていった。
ところで、ネットビレッジは平成10年4月に西新宿から八王子に移転していたため、取引先との打ち合わせは常に都心まで出なければならなかった。そんな中、ネットビレッジの社員は長時間メールチェックができないことにかなり不便を感じており、「携帯電話でパソコンのメールチェックができれば・・・」と常々思っていたそうだ。これらの発想と開発が融合して出来上がったコンテンツが「リモートメール」である。 |
機能面、使い易さ、何れの点も優れているリモートメールは、NTTドコモやKDDIといった通信キャリアの信用を勝ち取り、サービス開始以来公式サイトとして位置付けられている。
株式公開は次世代で勝ち残るための通過点!
「実は当社は平成12年11月にナスダック・ジャパンへ上場する予定だったんですよ」と三浦さんは言う。好調なリモートメールユーザーを一気に増やすための設備増強や広告宣伝の資金を上場によって調達するつもりだったのだ。ところが上場間際に株式市況が急激に悪化、10月に上場した企業は全て公募割れするという異常事態にマーケットは見舞われた。ネットビレッジは上場直前にその延期を発表せざるを得ず、「これが原因で当社は危うく資金ショートに陥るところでした。結果的に第3者割当で切り抜けましたが・・・」と三浦さんは当時を振り返る。
今回も市況は相変わらず低迷しており、しかも上場直前にナスダックが日本から撤退するなどマーケットは相変わらずの逆風の中だ。そんな中、今回ネットビレッジが株式上場に踏み切ったのは、自社の信用力を上げるためである。「携帯電話台数の伸びが鈍化しており、今後この業界は間違いなく再編・淘汰・大手の参入が始まる。当社が大手と戦い、そして生き残っていくためには信用力は欠かせない」と三浦さんの語気は鋭い。そして「数年後には次世代携帯が主流になり、ますます高速化・高機能化が進む。上場で得た信用をバックにその時に一気に仕掛けていけるよう、我々は進化していかなければならない」と意気込む。
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今やNO.1携帯メールサービスプロバイダーとして君臨するネットビレッジだが、手綱を決して緩めることなく、次の戦いに供えているのだ。
編集後記
ネットビレッジという会社の存在を知ったのは、今年8月20日の日経新聞に掲載されたナスダックジャパン撤退関連の新聞記事である。記事上ではナスダックジャパン撤退にあわせて他市場に変更する企業がありながら、ネットビレッジは敢えて「知名度や信用力を高めるため、上場時期を遅らせたくない。上場後も大証が引き継ぐ新市場に残る。」という飯田社長のコメントのもと、9月19日に上場に向けて準備を進めていることが書かれてあった。
「八王子には上場目前の元気のある企業もあったのか・・・・」という事実にかなりの驚きと興奮を感じた。しかも調べると2年前にも上場することができたとか。2年前というと、ネットビレッジは創業わずか3年で上場できたということではないか・・・「すげー会社だ。是非取材を!」と思い、早速アポをとったのだ。
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ところが、取材をしてみると三浦さんの言うとおりネットビレッジはまさに「波乱含み」。この5年間は苦労と失敗の連続だったようだ。しかし、次代のヨミのもとメールに技術開発を集中させた決断力、そして「リモートメール」を完成させた技術力、さらに通信キャリアに「リモートメール」を公式コンテンツにさせた営業力がネットビレッジをNO.1携帯メールサービスプロバイダーとしての地位まで伸し上げたのだ。失敗を繰り返しても、必ず勝機はある。それが実証されているようだ。
ITバブルがはじけ、IT関連企業が軒並み苦戦を強いられている昨今、ネットビレッジはこの混沌とした次代を見事切り抜け、2002年3月期には通期黒字を達成している。八王子にあるネットビレッジ。今後が楽しみである。
(取材日2002年8月29日)