第20回 (有)セルフィッシュネス
会社経営を行うのに大事なのは人間関係
取材先 (有)セルフィッシュネス(代表取締役 布川千春 )
所在地 八王子市南大沢町2-2 パオレ4F
電話 042-674-9417
e-mail info@selfishness.net
URL selfishness.net
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アウトレットモールやシネマコンプレックスが建設され、近年賑わいを見せている多摩ニュータウン南大沢地区。その中で「暮らしの情報センター」という看板を掲げ、地域のマーケティングやイベントなどを手掛ける女性だけの企画会社が有限会社セルフィッシュネスだ。今回はその会社を牽引する代表取締役の布川千春(ぬのかわ ちはる)さんとチーフプランナーの鎌田菜穂子(かまた なおこ)さんにお話を伺った。
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新しいまちの暮らしをサポート
ニュータウンに新築マンションを購入したとしよう。そういった新しい入居者は、周りも同じような新住民のために相談相手がいないことから、保育園の入園手続きや買い物先などの生活情報が不足しがちだ。セルフィッシュネスはそういう暮らしの不安や不便を解決してくれる「まちの助っ人」だ。
その活動は様々だが、その1つとして、最近始めた『コミュニティーフォーラム』と呼ばれる取り組みがある。これは、マンションの購入者に向けて、入居前から地域の情報誌の発行・発送やサークル活動の希望調査を行い、その結果をもとにカルチャー教室や子育てサークルなどを発足の手伝いを行うもの。そもそもは、マンション事業者からの依頼を受けたこともあるが、「新しいまちでの暮らしのスタートを支えたかった」と布川さんも鎌田さんも口を揃える。このように、あらゆるきっかけ、チャンスを捉えられるのも、この地で培われた情報が蓄積されているからこそできるのだろう。
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社名はわがまま・自己中心的!?
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セルフィッシュネスの社名を直訳すると「わがまま・自己中心的」だが、会社名としては「その意味の逆手をとっている」のだそうだ。男女平等と言われていても、現実には女性にとって、結婚や子育てと仕事を両立できる条件、環境はまだまだ整っていない。布川さんたち自身、自分に子供ができた時、子育てのフォローがある仕事がないかと探してはみたが、どこにもなかったという。
「それならいっそのこと自分たちでやってしまえ」。こうしてセルフィッシュネスは女性スタッフのみで立ち上げられた。その事業コンセプトは「資格や能力を持った人が家庭に入ったために埋もれるのはその人にも、社会にも損失です。そんな埋もれてしまった有能な人を発掘し、社会で必要としている人と結びつける」こと。いわば、無い物ねだり同士の『無い物ねだり』を満たそうというわけだが、「これは世間一般の仕事を主眼とした『常識』からすればある部分『わがまま』でしょう。だから社名にした」という。 |
セルフィシュネスの原点
布川さんは、結婚前はホテルに勤務。そして結婚後退職。本心はそのまま世間一般の主婦になるつもりだったそうだ。しかし、洋裁が趣味だったこともあり友人からアパレル会社を作らないかと誘われ、その会社を立ち上げた。景気が良かった時もあったというが結局失敗。2年のブランクを経て、昔の経験を生かしブライダルコーディネターとして、ある会社の企画担当をしたが、またもや倒産。2度の倒産経験という仰天のエピソードの持ち主なのである。「始めの会社で、生産管理から経営管理まで携わっていたので、2回目の債務処理はスムーズにできた」と苦い経験をボジティブに話す。
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またこの経験から、「TOPとして会社経営を行うには大事なのは人間関係、それは転がる前にそれなりの人脈を持っていなくてはならない」ことを学んだそうだ。だからセルフィッシュネスが人を大事にしているのは、ここが原点になっているのかも知れない。
まちの賑わいは自分たちの手で
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以前はこの地に進出してきた量販店が次々に撤退するなど、暗い話が多かった多摩ニュータウン南大沢地区。今の賑わいを醸し出すまでには、セルフィッシュネスの貢献無くしては語れない。
それは、東京都が実施した多摩ニュータウンの西部活性化対策事業の事務局を平成7年~10年まで担っていたからで「人が集まるための数々の仕掛けを行った」と振り返る。ほんの一例を紹介すれば、アウトレットモールに姿を変える前にあったムービックスのドライブインシアターの誘致活動がある。これは、セルフィッシュネスがまちの満足度調査を街頭で行い、それに基づいて生まれた施設だった。また、未利用地に企業が進出してくれるよう現地見学会のツアーコンダクターを勤めたり、スーパーが撤退した空きフロアに市内の幼稚園児の絵を集めての展示するなど、「まちの中心への人の流れを保つよう努力した」と言う。 |
さらに、住民が現在のまちの姿に満足することなく「暮らしを守るために、暮らし手が手を繋ぎ地域の応援団になる」という活動もしている。それにより、広い多摩ニュータウンだから、車等で移動すれば隣の地域で安い買い物もできる。しかし、「かつて近場に店がなくて買い物ができず困ったのなら、南大沢に出店した店が撤退しないように、たとえ1円高くても地元で買い物をしよう」という意識が暮らし手に芽生えてきたという。セルフィシュネスはこういった啓蒙活動をしているのだ。
まちの資産をまちに提供
南大沢で行われている『フラワーフェスティバル由木・春の南大沢ガーデニングショー』や『秋の南大沢ガーデニングショー』。当初は、東京都、八王子市、都市基盤整備公団等が多摩ニュータウンの地域活性化の目的で始まったものだった。ところが、都の予算が年々削減され、フェスティバルも予算がつかなくなった。そんな現状の中でも、「フラワーフェスティバル由木・春の南大沢ガーデニングショー」は、「八王子まつり」「いちょうまつり」と並んで八王子の三大祭りと位置付けされるまでに発展してきている。それは、事務局としてイベントのコーディネーターに関わる同社が創意工夫して継続してきた賜物だ。
「コミュニティーづくり、まちづくりは、予算のある無しに係らず続いていくもの。暮らし手がより多く参加し、等身大の活動ができることが大事。このようなまちづくりに係われたことは感謝している」と布川さんは言う。これからは、「顔の見える関係で、まちの人の持っている資産(スキル・資格・ネットワーク)をまちに提供できるような『プロダクション』となる」と今後の抱負を語った。
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編集後記
セルフィシュネスが展開する各イベントには学生アルバイトが欠かせない。すぐ隣に都立大学があるため、人の確保は問題なかったそうだが、「学校を卒業してからもここに寄ってくれるのが何よりも嬉しいし励みになる」と布川さんは言う。まさに、ここが学生にとって第2の故郷になっているようだ。布川さんが巷で「まちのお母さん」と呼ばれているのはそのためだろう。「お母さん頑張れ!」と思わず言いたくなったのは私だけだろうか。 (^o^)丿
(取材日2002年8月20日)