CO.HACHIOJI元気な企業インタビュー

第39回 (株)シー・シー・デー

顧客へは完全なオリジナルモデルを!

取材先 (株)シー・シー・デー(代表取締役 西川良子)

所在地 八王子市明神町1-25-11

電話 042-646-6679

e-mail bj4y-nskw@asahi-net.or.jp

URL www.ccdimage.co.jp/

代表取締役 西川 良子さん

例えば大量の錠剤がベルトコンベアー上に流れている製薬工場で、錠剤の傷・汚れ・割れ等を人間に代わってチェックするのが、CCDカメラ(ラインセンサカメラ)による外観検査装置だ。

 CCDカメラを活用したこのような装置が、人間の「眼」と「頭脳」に代わって台頭し始めたのは1980年代になってから。八王子にある(株)シー・シー・デーは、当時からいち早くCCDカメラ装置を手掛けた業界のパイオニア的な企業である。その会社を率いる西川 良子さんは、モノづくりには珍しい女性社長だ。今回は西川社長にお時間を頂き、色々なお話を伺った。

 

 

『業界のパイオニア』の武器は『小回り』の効く開発!

 シー・シー・デーはCCDカメラを利用した応用製品の専門メーカー。ラインセンサとエリアセンサの両方を扱い、外観検査装置やCCDカメラのデータで画像処理を行う画像処理装置、CCDカメラの画像信号をパソコンに入力する一次元画像入力装置等を世に出している。それも単なるハードだけではなく、ソフトとプログラムまで一貫しての納品が可能である。したがって、顧客の目的と予算に柔軟に対応したオリジナルモデルを供給することもできる。言わば「かゆいところにも手が届く」対応ができるのだ。開発に小回りが効く。これは、シー・シー・デーならではの強みの1つである。
 

また、早い時期から手掛けているゆえに「CCDカメラの基本技術はだいたい持ち合わせている」シー・シー・デー。「1980年代に納品した錠剤自動選別機が未だに現役で稼動している」ほどの製品の信用力を得ている。その技術力の確かさはもう1つの強みと言える。

 

シー・シー・デーの画像処理装置。一般のCCDカメラの分解能では満足できない、高精細な画像計測や円筒形状の製品の展開図の入力等に適している。

 
 
 

 

業界は先代の社長によって切り拓かれた

八王子で創業したシー・シー・デーは、市内業者を外注先として活用することも多い。

 もともとシー・シー・デーは1982年、現社長西川良子さんの夫である信夫さんが創業した。大手電機メーカーの優秀なエンジニアであると同時にチャレンジャーでもあった信夫さんは「大きな組織に属していてはなかなかやりたいことができない」と、34歳の時にCCDカメラの技術を携えて独立。“CCD”という言葉すらあまり一般的ではなかった当時、社名をそのものズバリ“(株)シー・シー・デー”と掲げ、業界に切り込んでいったのである。

創業早々にはラインセンサカメラによる画像入力装置や錠剤検査装置等の開発に成功。その後も顧客のニーズに丁寧に対応しつつ時代を先取りした開発を進め、シー・シー・デーは軌道に乗っていった。ところが1998年に不幸にも信夫氏がお亡くなりになり、良子さんが社長を継いだのだ。

 

 

 

『ベンチャースピリッツ』が会社を支える!

良子さんはもともとは歯科大の助手。事業は全く畑違いだったが、シー・シー・デーが世に認められていった1984年の中頃から徐々に事業に参画していく。当時の良子さんは多少BASICのプログラムが見られる程度。とても“実践”に対応できるレベルではなかったが、納期の迫っていた2次元画像取組み措置を間に合わせるためにいきなりその開発に参画したそうだ。
 

とはいえ、何しろ分からない事だらけだ。そのため、まず行ったのが「制御の本、電子回路の本、機械語の本を買いあさる」こと。「読んではそれをマネする」を繰返し、それこそ連日の徹夜、寝ても夢にまで出てくるほどの集中力で、とうとう自分が受け持つ制御プログラムを完成させたのだ。驚くべきエピソードである。

 

その後も良子さんの体当たり的事業展開は続く。80年代から90年代にかけて数台納品した錠剤自動選別機の開発では、月曜日の朝に現地にひとり車で出かけ、そのまま現地に泊まりっぱなしで金曜日の深夜に帰宅するという生活を1ヶ月も続けたこともあるそうだ。これはいくらなんでも男性でもちょっとキツイ。でも「(信夫さんからは)もともと『働くなら起業意識を持って働け!』と言われていましたから」と良子さんは笑顔で応える。

 

信夫さんが亡くなったのはシー・シー・デーが軌道に乗った矢先の1998年。そして会社の存続をかけて良子さんが信夫さんの意志を受け継いだ。きっと大変なご苦労があったと思うが、「心強い社員の協力と周囲の仲間や、お客様によって支えられたからこそ、乗り越えることができた」と良子さんは語る。気合とベンチャースピリッツを備えた良子さんと、そんな良子さんをフォローする人々の暖かい協力によって現在のシー・シー・デーはあるのだ。

 

突っ走ってきた経験を語る良子さん。驚くべきたくさんのエピソードがあった。

様々な機器が置かれている仕事場の様子。この場で顧客の要望に合ったオリジナル製品が組み立てられる。

 

 
 

 

強みを活かして1歩先へ!

新製品の「カメラ複数台同期中継器」。CPU1台で4台のカメラの同期作動を可能にするため、大幅なコスト削減が実現され、またデータの位相ズレの心配もない。幅が広いシートや鉄板等の外観検査に適する。

企業が合理化やリストラを進める中、人の代わりに活躍できるCCDカメラのニーズはますます高まっている。しかも、例えばベルトコンベアーにしてもかつてとは比較にならないくらいスピードが上がっているなど、環境の変化にともなって顧客のCCDカメラに対する期待や要望も高くなる一方だ。良子さんは「高度な技術を求められる上に、この業界は競争相手が多い。全く気が抜けません。」と気を引き締めている。それだけに、「情報の共有化と技術の継承」を強化して自社のウリである「小回り」の効く「オーダーメイド」開発を盤石にしていく。これを今後の事業展開の第一目標に据えている。「厳しい業界を生き残るためには、社員一人一人が確実な技術を持ち、自分で考え、顧客に対応していけるようにならなくてはならない」と良子さん。業界のフロンティアであるシー・シー・デーは決して手綱を緩めない。
 
 ものづくりには珍しい女性社長が舵取りをするシー・シー・デー。この会社が造る「眼」と「頭脳」は、今後も我々の生活を豊かにしていくことだろう。
 

 
編集後記
 
取材の時に、西川社長より産業開発機構(株)が発行する「映像情報総覧」という書籍を頂いた。これは映像・画像機器に関するハード・ソフトのバイヤーズガイドであり、中にはすごい数のCCDカメラ関連メーカーや商社が掲載されている。
 

今回の取材をとおして、CCDカメラというものが工場の検査用からデジタルカメラまでいかに我々の生活に密着しているかということを痛感したが、その分業界の裾野は広大であり、(「映像情報総覧」にあるとおり)多くの競合企業がひしめく厳しい業界であることも確信した。その中で生き残るためには、「小回りの効くオーダーメイド開発」に活路を見出すシー・シー・デーのように、付加価値をつけて自社の差別化を図ることが問われてくる。大変な業界だと思うが、その点を明確に打ち出す八王子のシー・シー・デーは、これからもきっと活躍してくれることだろう。

 

ところで、取材時に西川社長へ「『女性社長』ということで困ったことはありますか?」と質問してみると、「常に顧客の『現場』に足を運んでいるが、たいていの『現場』には男性用の更衣室しかないことくらい」と笑顔で回答を頂いた。思わず笑ってしまったが、仕事の面では全く女性というハンディを感じさせない西川社長はやはりスゴイと思った。

 
(取材日2002年3月10日)