CO.HACHIOJI元気な企業インタビュー
第48回 アートビーム(有)
夢で始まり、技術の粋を究め、社会に貢献する!
取材先 アートビーム(有)(現代表取締役 新井 傑也)
所在地 八王子市中野山王1-6-6
電話 042-622-7380
e-mail info@artbeam.co.jp
以下、取材当時の記事になります。
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世の中には試作品を製造する企業はたくさんある。しかしながら、顧客要望に対応できるだけの一通りの材料を常に揃え、素材選定から量産検討を含む全工程を請け負うことができ、さらに曲げ・絞り・組立はもちろんレーザーや精密放電まであらゆる加工技術をこなすことができような“すごい企業”はそうは見つからないだろう。八王子のアートビーム(有)はまさにその“すごい企業”なのだ。今日はこのアートビームを訪問し、代表取締役の松木 良春(まつき よしはる)さんから興味深い話を伺った。 |
短納期・小ロット・コストダウン・・・顧客要望を即実現!
アートビームは高度な試作加工技術で試作品を製造する会社。素材選定、部品設計、試作、評価、量産検討という全ての試作ワークを完全にこなすことができるため、顧客は設計だけに専念することができる。主に事務機器(プリンター、コピー機、デジタルカメラ)の試作を行うが、その中でも「特に難易度の高い試作を請け負っています」と松木社長。なるほど、工場内を見回すと多くの最新の精密加工機器はもちろん、その間には高価な3次元測定器が4台も揃えてあり、いかにこの会社が精度の追求をしているかが伺え知れる。
また顧客のあらゆる要望に応えるために、素材選定のタイムロスを減らすべく様々な材質の資材を一通り社内に揃え、積層金型等を活用して短納期・小ロット・コストダウンを図る等、アートビームの試作製造体制は完璧に近い。「メーカーからの高い要望にどれだけ対応できるかが我々の生命線」と松木社長は言うが、アートビームにはその環境が揃っているのだ。 |
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至高の加工技術! 超精密放電加工
さらに特筆すべき点は、アートビームの超精密放電加工技術だ。これは東京大学の増沢教授や松下電器産業との共同研究開発で生れた超微細放電加工機を活用し、ミクロン単位での放電加工をも実現している。「従来技術に加え、電子・化学・機械工学技術の融合により、初めて可能となる加工の世界だ」と松木社長が豪語するこの加工技術は、様々な微細分野に応用が可能。特にマイクロマシンに要望される超微細な部品の加工をも実現でき、もはや中小企業でここまでやれるのはアートビームだけ・・・と言っても過言ではない。そしてこの高難度な加工技術は松下電器産業の生産技術研究所からもお墨付きが出ており、委託加工指定会社として同社からオーソライズされているのだ。 |
“将来の戦力”が次ぎのアートビームを担う!
アートビームの創業は昭和62年。創業16年経つこの会社の技術力の高さを考えると、働いている社員はきっと永年加工に従事しているベテラン技術者ばかりなのでは・・・・というイメージを持ってしまう。ところが社内を見回すと、真剣な面持ちで機械を操作している社員の大半は若者であり、社内は活気に満ち溢れている。それもそのはず、「会社は常に活性化していなくてはならない。そして組織を活性化させるには若い人材を採用することが一番」という松木社長の方針から、アートビームはここ数年積極的に新卒採用を行っており、今や社員44名の平均年齢が29.5歳になるまで若者が増えたそうだ。「組織の活性化が社員のやる気を引き出し、アートビームの将来の技術を担う人材が育つ」のであり、この意志は“即戦力”ばかり期待して中途採用に傾倒する昨今の企業の考え方と一線を画す。“即戦力”に投資するのではなく、“将来の戦力”に投資をする、これがアートビーム・イズムなのだ。
昨今では超微細放電加工などの特殊技術が評判になり、学生の方から問合せがあったり、会社訪問に来たりすることも多いとのことだ。 |
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夢で始まり、技術の粋を極め、社会に貢献する!
さて、屈指の技術力を誇るアードビームだが、決して現状に甘んじている企業ではない。放射性が高くかつ軽量のため様々な分野で活用が見込まれるが、高剛性ゆえに精密な形状に表現しづらい「マグネシウム合金板」をより活用しやすい素材にする開発や、直径5ナノメートルの人工ダイヤモンド素材である「ナノダイヤモンド」を燃料電池や半導体ウェハー洗浄、医療分野へ応用していく研究等、未来を見据えた研究開発を産学連携で推し進めている。「最初は単なる“夢”かもしれない。しかしその“夢”に向かって技術を磨いて行けば、必ず到達するのです。」と松木社長は熱く語る。アートビームが創業以来繰り返してきたことは、まさにこの言葉に尽きるのだ。 |
ここまで丸見えだとかえって社員はやり難いのでは?と一瞬思ってしまうが、この会社の視点はそんなレベルにはない。「完全な間仕切りの部屋では現場は現場の世界だけで一日が終わってしまい、下手すると管理部門の人間とは一日中交わることがない。しかしながら、お互いどのような動きをしているかは気になるところであり、また気にするべきである。」と松木社長は言う。社員全員が現場で今何が起こっているかを共有することで、風通しの良い全社一丸となった組織がつくれるということなのだ。アートビームの活気ある雰囲気は、こういった物理的要因にも拠っているに違いない。つくづく細かいところまで配慮が効いている会社である。
こうした社のポリシーは、即戦力”にではなく“将来の戦力”に投資をするために新卒採用を重視している姿勢にも十分反映している。会社の発展はそこに勤める「人」次第。であれば、その「人」が働きやすく、夢や期待を抱ける環境を整備することに真摯に取組むのだ。目先の合理性や好不況に囚われるがために意外に後回しになってしまうこのことこそ、実は会社の運営では一番大事なことなのである。
アートビームに「会社の原点」を垣間見た気がした。