CO.HACHIOJI元気な企業インタビュー

第52回 (有)塚野製作所

絶対に諦めない姿勢が、超精密加工を実現する!

取材先 (有)塚野製作所(代表取締役 塚野龍ノ介)

所在地 八王子市大和田町6-12-23

電話 042-643-6636

e-mail ss@tsukano.co.jp

URL www.tsukano.co.jp/

代表取締役 塚野 匡央さん

ものづくりの先端技術分野では様々な装置が活躍している。そうした装置の主要な部品の多くは、中小企業によって作られているということは、意外にも知られていない。最先端になればなるほど、部品に求められる加工精度は高くなる。そんな金属加工の分野で、“超精密加工”を掲げ、他の企業からも「八王子に塚野有り」と称されるほどの会社がある。それが、“金属機械加工による超精密加工領域を実現する”有限会社塚野製作所なのだ。今回、塚野製作所代表取締役の塚野匡央(つかの・まさなか)さんに、超精密加工に賭ける想いを語っていただいた。

 

 

右も左も分からない中でスタートした二代目社長

塚野製作所の歴史は、昭和35年に塚野匡央さんの父である先代社長が、三鷹市で創業したことに始まる(その後昭和57年に八王子市に移転)。当時から金属加工を行っていたが、社員は3名の零細企業としてのスタートだった。塚野さんは、大学を卒業すると、何の疑問を感ずることなく父の会社で働くこととなった。

ところが、意外にも早く転機が訪れる。塚野さんが35歳の時、先代社長が急死してしまったのだ。あまりの突然の出来事に、浮き足立つ中で、経営の知識など全く無かった塚野さんが、社長として会社を切り盛りせざるを得なくなったのだ。塚野さんは、そんな当時を「経理はもちろん、従業員への給与の支払い方法すら知らない状態で、従業員に聞きながらやりましたよ」と振り返る。こうして、心の準備も無い中、二代目社長としてスタートを切ったのだった。

    二代目社長として、当初は苦労の連続だった塚野さん。

 

“超精密加工の塚野”ここに有り!

     ”超精密研削加工”と誇らしげに書かれている塚野製作所 塚野製作所を訪れると、看板に書かれた“超精密研削加工”という文字が目に入ってくる。まさに加工技術に対する自信の現れである。その塚野製作所が、最も得意とする加工は、研削、そして研磨である。研削とは加工部品の形状を仕上げる工程、研磨は表面の精度を高めるために行う仕上げ加工ある。塚野製作所は、その分野で「表面を削らせたら、塚野の右に出るものはいない」と言われるほど、極めて高い加工精度を誇る。その精度は公差1/1000mmレベルにまで達するほどだ。さらに、“超精密”は研削・研磨にとどまらず、放電加工、ワイヤーカット加工においても貫かれている。  塚野製作所で加工するモノは、主に生産設備の部品である。年間では約120社ほどの取引先があり、その多くは大手企業だ。営業部隊を持たない塚野製作所が、どうしてこれだけの仕事を確保できるのか?答えはいたってシンプル、「よそでは出来ないモノを作ることが出来る」からだ。メーカーの設計者が作った図面を具現化できず、たらい回しにあった「難しい」、「困った」モノが、巡り巡って塚野製作所に舞い込んで来るというわけだ。
      放電加工の様子。研削に留まらず塚野製作所は常に”超精密”を追求する。

 

 

飽くなき精度の追求

常に進歩している先端技術分野。その中で使われる装置もまた、高精度が求められている。それに伴い、加工技術もより高精度化を目指さなければならない。塚野製作所は、この“精度”で差別化を図り、製造業にとって厳しい時代でありながら、確固たるポジションを得ているのだ。他の会社では、出来ないモノをこなしてしまうその背景には、塚野さんの「常に難易度の高いモノを追いかけて行く。持ち込まれた仕事は、絶対に諦めない。」という言葉に込められた強い意志がある。社員に対しても、「必ず出来ると思って、創意工夫しろ!」と檄を飛ばすその姿勢は、取引先の設計者の想いを具現化したいという想いの現れだ。

しかし、超精密加工は、こうした意識のみでは成し得ない。良い職人たるもの、より良い“道具”を求めるもの。塚野製作所には、最大のウリである超精密加工を実現するための“道具”として治具研削盤、放電加工機など高水準の加工機を取り揃えている。さらに、超精密を証明するための、“道具”として三次元測定器、表面粗さ測定器など公設試験場顔負けの設備を揃えている。まさに職人の技、加工機、検査装置が三位一体となって、超精密加工を実現しているのだ。これが、塚野製作所の強みなのである。

今、日本の製造業の空洞化が叫ばれて久しい。塚野さんも、「仕事がどんどん減ってきている中で、中国や台湾に追い上げられないよう、さらに超精密を追求していく」と力強く語ってくださった。こうした飽くなき精度追求、技術力の向上が、日本のものづくりを支えてゆくことだろう。

      2階から見下ろした社内の様子。所狭しと工作機械が並ぶ。
     2階にはワイヤーカット放電加工機が設置されている。
    ”超精密”を数値で証明!検査・測定機器はフルラインナップで揃っている。

 
編集後記
塚野製作所に伺って、まず驚いたことは、社長室や応接室が無いことだ。扉を開けるとそこは、加工機械がところ狭しと並んでいる。その片隅に、事務机が並べられ、受付らしきものが...。忙しそうに座っている方に声をかけると、その人物こそが塚野社長だったのだ。

塚野社長は、いかにも職人といった感じの方で、「忙しいから20分で終えてくれ!」と言われた時は、正直どうしたものかと思ってしまった。そんな中でも、結局1時間近くお時間を割いていただいたことに感謝している。

元気な製造業に共通している点だが、工場内は非常に整理整頓が行き届いている印象を持った。一階は、治具研削盤や放電加工機が並び、ニ階にはワイヤーカット、各種検査機器が揃っている。「超精密加工が出来る」と言うだけでなく、それを裏付ける設備を自前で備えていることが強みである。もちろん、工場内を常に24度に保ち、安定した加工が出来るように配慮したり、熱処理に細心の注意を払ったりと、金属の物性を理解し、技を磨くことがあればこそ、揃えた設備が生きてくるというものだ。こうした姿勢が、信頼獲得に繋がっているのだろうと想像できた。

この塚野製作所、ITも積極的に活用している。例えば、CAD/CAMのプログラミングも全て自社内でこなし、さらに自前のサーバーを置いて、ホームページの管理も行っている。社長の息子さんが中心となって管理しているようだが、ホームページを見て依頼される仕事も多いとか。もっとも、ウリになる技術があればこそだが、営業部隊を持たない塚野製作所にとって、有効なツールとなっているようだ。

(取材日2003年9月3日)