CO.HACHIOJI元気な企業インタビュー
第65回 (株)アサヒ化学研究所
情報収集力と製品開発力で、世界市場を狙う!
取材先 (株)アサヒ化学研究所(代表取締役 岩佐 彰大)
所在地 八王子市宇津木町656番地
電話 042-644-2661
e-mail chemi@blue.ocn.ne.jp
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携帯電話端末の分野で、グローバルな情報収集とタイムリーな製品開発により、世界市場をターゲットに事業を展開している従業員60人規模の会社がある。 |
原材料から基板まで ~プリント基板関連業務に特化~
同社は地元八王子出身(八王子工業高校)の岩佐社長が昭和42年に設立した、エレクトロニクス電子材料の研究開発・製造・販売を行う、社名のとおり「化学」を基本技術とした会社である。
同社は、暁町の賃貸工場からスタートし、昭和45年には諏訪町の自社工場へ移転。平成2年には宇津木町の現在地へ移転し、現在では、原材料から基板までを提供できるプリント基板関連業務に特化。多品種少量生産体制を強みに、エレクトロニクス機器の製造段階で各種部品を実装する際のはんだ付け薬品類・プリント基板加工用の補助材料・各種導電ペースト・各種接着剤の製造、自動はんだ付け装置及び周辺機器の販売を行っている。 |
海外携帯端末市場に狙いを定めて
私たちの生活の中で、今や欠かせないツールとなった「携帯端末」。街中の携帯ショップでは各メーカーから、非常に短い開発サイクルで、新しい機能を搭載した新製品が続々と登場している。
ところが、国内市場を占める日本メーカーの携帯端末、実は国際競争力が極端に弱い商品でもあることを皆さんはご存知だろうか。 ある調査では、2005年10月~12月の携帯端末の世界シェア(占有率)は、フィンランドのノキア(35%)、アメリカのモトローラ(17.8%)、韓国のサムスン電子(12.1%)が3強で、全体の3分の2近くを占めている。それに対し日本のメーカーは、スウェーデンのエリクソン社とソニーの合弁によるソニー・エリクソン・モバイルコミュニケーションズ6.9%の5位が最高で、国内トップクラスの松下電器産業やNECでも1~2%に過ぎないのが現状だ。 |
時代のニーズにも迅速に対応 ~環境への配慮~
いよいよ2006年7月からEU(欧州連合)で施行される「RoHS指令」。これにより、鉛・水銀・カドミウム、六価クロム、臭素系難燃剤等特定有害物質のいずれかを含有する電子機器部品の調達、材料の加工、製品の出荷等ができなくなる。この動きを受けて、国内のエレクトロニクス業界も対策に追われており、特に鉛入りはんだの全廃による鉛フリーはんだへの対応力強化が喫緊の課題となっている。
同社ではこの世界的規模で転換が求められる鉛フリーはんだへの対応も素早い。既にすず・銀・銅を対象とした「クリームはんだ」を開発。岩佐社長曰く、「材料としては、ほぼ、この問題をクリアしている。」状況だ。 |
製品開発の方向を見極めるもの ~情報収集の重要性~
海外市場をメインターゲットとする同社では、製品開発にあたって、何を重要視しているのか岩佐社長に伺った。「製品開発にあたっては、メーカーの要望に速やかに対応できなければいけません。特に携帯端末の市場では、半年ベースの開発トレンドに乗らなければ、メーカーから次の注文は来ません。そのためには、開発の前段階から情報を収集しなければなりません。メーカーの要望に速やかに対応し、メーカーの今後の製品開発の方向性を見極めるには、情報収集に限ります。」
製品・技術開発にあたり、情報収集を重要視する同社は、社員約60人の中から、ノキア本社のあるフィンランドのサロ市を始め、シンガポール、マレーシア、台湾、中国、アメリカ、メキシコ等世界各国に社員を派遣、また現地代理店との提携により、メーカーの情報収集にあたる「グローバル企業」でもあるのだ。 |
若手人材の育成にかける想い ~より高付加価値の製品づくりを目指して~
ところで岩佐社長には近年特に憂えていることがある。それはものづくりの将来を担うべき若手人材の現状と、国内電器メーカーの製品開発への慎重な姿勢である。
「最近の若い人は、手が汚れることを嫌います。当社のような原材料開発の過程は、基本的に手が汚れる作業なのです。また、若い人がものづくりの研究開発で入社しても、ものづくりそのものを好きでない人が多くなった。」と語る岩佐社長。同社にはこの4月に即戦力の人材と新卒を併せ、5人が入社した。岩佐社長のもと、必ずや世界市場をターゲットにした同社の技術・製品開発を担う人材が育つに違いない。 また、国内電器メーカーの開発姿勢への見方も、非常に手厳しい。「メーカーでは、材料開発担当の部門が保守的、消極的になっていて、なかなか新しい技術等を採り入れようとしない。ずっと続いてきたリストラの影響で、メーカーの技術者の意欲が低下しているのではないでしょうか。」・・・とは言え、岩佐社長は、景気の回復に伴う消費の増加からか、昨年あたりからメーカーの開発意欲が高くなっているとの感触もつかんでいる。この流れを受けて、同社では、ここ数年海外事業に力を入れてきたが、今後は、国内事業のてこ入れを考えているという。 |
「単に売上げを増やすことよりも、新しい技術開発によって、より付加価値の高いものをつくることを目標にすべきだと思う。」製造業の今後目指すべき方向性について語る岩佐社長。岩佐社長に率いられる同社は、これからもグローバルな情報収集と独自技術に裏付けられたタイムリーな製品開発で、世界市場を相手にした付加価値の高い製品をつくり続けるに違いない。
これら海外各地に派遣・常駐する社員からの情報を適確に分析し、顧客の要望に対しタイムリーに製品開発に活かしていく。ここに同社の強みと凄さを感じる。