CO.HACHIOJI元気な企業インタビュー

第76回 セキアオイテクノ(株)

マーケットイン手法による高速画像処理システムの製品開発!

取材先 セキアオイテクノ(株)(代表取締役社長 赤 哲男)

所在地 八王子市子安町4-27-6

電話 042-627-2211

URL www.sekiaoi.jp/

代表取締役 赤 哲男さん

60年代より始まった画像処理技術は技術者の努力によって今日では様々な応用技術に広がった。工業用画像処理、衛星画像、医用画像、セキュリティ、生体認証など各産業を支える重要な要素技術として成長を遂げている。

そんな中、開発当時より大型コンピュータ用コアメモリーの緻密な編組からスタートし、プリント基板実装、医療機器、計測器、写真撮影機、デジタル銀塩出力プリンタなど、蓄積してきた技術を駆使して画像処理技術に応用を広げ、次々に自社製品を世に創出し活躍している企業がある。八王子市子安町にあるセキエレクトロニクス株式会社である。今回はセキエレクトロニクス株式会社 代表取締役 赤 哲男社長、総合企画室部長 宮本隆二郎氏にお話を伺った。

 

 

メカトロ試作から電子機器組立まで一気通貫!フレキシブルに対応

セキエレクトロニクスでは長年の実績と独自の技術で多種多様な製品の設計、開発、製造を行っている。管理・営業・購買部門および設計・開発の拠点となるセキエレクトロニクス(八王子本社)を筆頭に、実装、計測、組立を行うアキタセキエレクトロニクス(秋田県)、高密度実装と多品種少量生産を得意とする葵カメラ(愛知県)の2グループ生産体制で画像処理機器や医療用計測器を広く市場に普及させ、身近なところで使われている。
 
 代表的なものとして、アミューズメント施設で見かける合成写真機「ふぉとくらぶ」やスキー場のリフト券などに使われる顔写真入りチケット発券機「フェイスインチケット」、医療機関で使われる血糖値測定器、人体に有害なオゾンを取り扱う現場に使われるオゾン濃度計などを手掛けている。 同社の強みはメカトロの試作、開発から精密な電子機器の組立まで一貫した製造ラインを持っており、これらをフレキシブルに活用し迅速に対応できることである。
 

プリント基板実装から組立まで自社内で完結できるシステムとなっている。(写真は葵カメラ工場)

SOFLEAR14 デジタル銀塩出力プリンタとして3色LEDを多重露光方式により360dpiでムラのない高画質プリントを実現。同社の最高技術を駆使した自信の出力プリンタ。

 
 
 
 
 

 

大手企業との共同開発に見事成功を収める

26年前、システム開発会社に勤務していた宮本部長は同社の熱意に打たれ入社を決意した。開発当時のお話を丁寧に説明される宮本部長

セキエレクトロニクスは44年前、1964年東京オリンピックの年に先代 赤 宏昭氏(現:代表取締役会長)が株式会社セキ製作所として現在の本社ビル地に家内工業的に創業した。創業時は主にコイル調整ドライバーやパルストランスの製造を中心に事業展開を図った。
その後、大型コンピュータ用コアメモリーの編組を手がけるようになり、同時に設計・開発の分野にも積極的に事業展開を図った。その結果、大手電機メーカの大型コンピュータに採用されることとなったのである。 また、マイクロプロセッサ技術で先行していた同社は大手光学メーカから共同開発の依頼を受け、見事開発に成功した。「当時、マイクロプロセッサに携わる企業は非常に少なかった。当社はこの分野の技術に先行していたお陰で光学メーカとの強い結び付きができ、大手メーカとの安定した受託生産を行うようになりました。」と宮本部長は語る。 この頃、セキ製作所の開発部門を切り離し、69年セキエレクトロニクス(現在)を設立、続いて76年秋田県の角館町に有限会社秋田セキ製作所(現:アキタセキエレクトロニクス株式会社)を設立するまでに至った。「創業から大手電機メーカ1社のみの取引でしたが、技術だけでなく、トータルに応用できる設計・開発分野にも重点を置くようになり、そして時代の追い風の影響もあり、取引先が増え続け経営が安定してきました。」と赤社長は語る。

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コアメモリーの編組(右図【拡大図】 

 

 

 

積極的な商品開発による自社製品の誕生

 順調に推移してきた同社は、これまで蓄積してきた独自の技術に画像処理や計測器への商品開発という新たな分野へ活路を見出すことになった。
 
 画像処理の技術は、60年代に郵便番号の読み取り装置が実用化されたのを機に、70年代~80年代、工業用画像処理や衛星画像処理、医用画像処理が試行されるようになっていた。画像処理技術はコンピュータと二人三脚で歴史を歩んできた関係もあり、半導体などの周辺技術の高度化によりコンピュータも大型汎用機が市場に広く普及されはじめ、ますます注目を浴びる存在となっていた。 同社は独自の基盤技術とオリジナリティという付加価値をつけて、86年「カラーグラフィックコントローラー」、「オゾン濃度計」など次々に自社製品を市場に普及させたのである。
 
 そして昨年12月「‘07国際画像機器展」に自社新製品の高速画像処理機「CL-IPUユニット」を使用したシステム2種「CLB-IPU」「CLC-IPU」を出展、デモを行い会場は大盛況となった。
 
 

「CLB-IPU-QKtime」 検査対象の表面や塗装面などのわずかな凹凸欠陥を即時処理し検出することができる  

「CLC-IPU-CompLine」 画像メモリを搭載しており基準となる画像の登録が可能。例えば印刷物などのパターン欠陥や色調欠陥を比較検査することができる 

画像機器展の会場の様子

 

 
 

 

マーケットインの存在であり続けること

 
創業者 赤 宏昭氏より社長職を引き継いだ赤社長は12年前、銀行マンから一転して同社へ入社した。「技術の世界は大変苦労します。しかし、やりがいがと達成した時の醍醐味があります。」と赤社長は語る。八王子生まれの八王子育ちの赤社長は小さい頃より先代の仕事ぶりを見て育った。よって、誰よりも会社を熟知し、社長職を継いでからも経営方針や従業員との接し方や考え方を自分なりのスタンスで捉えて実践されている。
 
 今後の展開について伺った。「高速画像処理技術は今後更に応用され、市場拡大していく分野です。当社はプロダクトアウトではなく、違う視点で光をあてるマーケットインの存在であり続けたい。また、ローエンドを捨て、ハイエンドをコアとすることも視野に入れていきます。詳細は言えませんが、現在、最先端の画像処理技術によって人間の技量の定量化を図るプロジェクトを進行中です。」と力強く語った。独自性を活かし、ユーザのニーズを的確に捉えるマーケットイン型の経営手法はこれまで同社が培ってきた専売特許であり、強みとも言える。
 
 若き赤社長を筆頭とするセキエレクトロニクスは今後も画像処理技術をコアとして、また新たな市場開拓を続けていくことだろう。
 

 
編集後記
 
取材を終えて、改めて画像処理という裾野の広さを感じた。と同時に使い方によって大きな可能性のある分野であることも知ることができた。
 
同社では2年前より積極的に展示会にも出展している。そこで新たな引き合いがあり、画像検査装置の製造に取り付けることができたとのこと。この常に何事にも前向きにチャレンジしていくこと、そして、的確にニーズを拾い上げることができる技術力と体制が整っていることは頼もしい限りである。
 
今回お会いすることができなかったが、創業者 赤会長の積極的な行動と常に新しい分野に挑戦する姿勢がセキエレクトロニクスの従業員全員に浸透し、後継者 赤社長へと確実に受け継がれていると感じた。赤社長との対談の中で、金融畑で培ったノウハウと経営感覚は先代とはまた違った持ち味を出しており、今後のセキエレクトロニクスの躍進が期待される。
 
(取材日2008年1月16日)