CO.HACHIOJI元気な企業インタビュー
第77回 お弁当テレビ(株)
食を通じて社会貢献!新感覚の“宅配弁当”サービス
取材先 お弁当テレビ(株)(代表取締役 後藤 秀夫)
所在地 八王子市新町1-5
電話 042-660-1256
e-mail obtv-info@co.obentou.tv
URL obentou.tv/
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「もっと美味しく、もっと便利に」~「食」の安全・安心と「環境」への配慮をモットーに、インターネットによる「お弁当」の受発注・配達システムを昨年スタートさせ、順調に売り上げを伸ばしている会社がある。 今回は、「冷凍食材卸業」から脱皮し、これまでにない「宅配弁当」の形を追求する、お弁当テレビ(株)の後藤社長を訪れ、話を伺った。 |
「お弁当テレビ」って何?
「お弁当テレビ」は、パソコンや携帯電話を使って、簡単にオフィスで弁当を注文できるサービスである。従来、オフィス弁当と言えば、総務部あたりの“お弁当担当者”が社内の注文を取りまとめ、弁当屋に一括発注するというケースが一般的だが、「注文忘れ」が生じたり、朝の多忙時に煩雑な事務が要求されたりと会社規模に応じては相当の負担となっていた。
ここに当社は目をつける。ネットを介し「個人ベース」で注文できるシステムを構築したことに加え、豪華景品と交換できるポイント制の導入や履歴管理を行える仕組み等、オフィスの昼食をより楽しくする工夫が凝らされている。ちなみに「お弁当テレビ」の「テレビ」とは、まるで“テレビショッピング”を見ているような、サイト内の随所に散りばめられた社員自らの出演による「動画紹介コンテンツ」に由来して名付けられた。 メニューは栄養士の管理の元、365日異なる無添加による「日替わり弁当」と、行楽やイベント向けの「特注弁当」の2種類。価格は400円~3,500円。利用客が同社のホームページから弁当の種類と個数を注文すると、食材の調達や配送体制を整えた上で、各地の協力業者に注文を伝え、業者が希望日時に会社に届ける仕組み。プラスチック製の使用済み弁当箱は、原則当日回収し、再利用する。口コミとインターネットを中心に当社の認知度は日に日に高まり、現在、毎日10万食近くを販売するに至っている。 |
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不味くて、馬鹿にされた“冷凍食品”
代表者の後藤社長は、祖父が機屋、父はメリヤス業という生粋の八王子っ子。時代は正に“ガチャ万時代”(機械が「ガチャン」と動くと万札(お金)が稼げると言われた織物産業最盛期の50~60年代)、周りの身内のほとんどが何がしかの事業をしているという“商売家系”の中で、経営センスは幼い頃から磨かれていく。 「外食産業に興味があり、高校を卒業してから様々なアルバイトをする中で、いくつか店舗を任されました。『すかいらーく』でも多くの無駄を見つけては改善提案し、1号店の立ち上げから任されたあるラーメン店は、その後50店舗まで拡大、アルバイトの身分でボーナスもいただきました」。まだ20歳にも満たない頃のエピソードである。
織物産業の将来を見越したのか、親からそれほど“事業継承”を勧められなかったという後藤社長は、その後、知人の経営する「冷凍食品」の卸売業を手伝う。「お弁当の食材としては今ほど一般的ではなく、不味くて馬鹿にされた」と語る当時の冷凍食品の販路を開拓するために、朝3時に起きて夜8時過ぎまで血眼になってお弁当屋を巡る毎日。3年後、その知人が配達中に交通事故で亡くなる。 「ライフスタイルの変化により、冷凍食品へのニーズは必ず高まる。お弁当屋も、作り手の善し悪しで味や質が左右されてはいけない」と一念発起、昭和60年、知人の個人営業を引き継ぐ形で、母と共に富士フーズ(株)を設立する。現在のお弁当テレビの仕事を支える屋台骨、全国500社の弁当製造工場(協力工場)のネットワークと信頼作りは、ここから始まる。 |
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ダイレクトな顧客の声
時代の経過と共に、メーカーのたゆまぬ“商品開発” “品質改良”の努力を経て、次第に市場にもお弁当屋にも認められていく「冷凍食品」。比例して、地道な営業活動が実を結び、売り上げを順調に伸ばす富士フーズ。
そうした折、更に一つの好機が訪れる。「弁当食材」に特化した富士フーズの冷凍食材が、大手コンビニチェーン「サンクス」の目に止まったのだ。メーカーとの共同開発と店舗拡大の波にも乗り、対サンクスの売上額は、富士フーズの売上の半分を占めるまでに至る。しかしそれも長くはなかった。“雨後の竹の子”の如くひしめくコンビニの過当競争の波に飲まれ、サンクスの出店計画にも陰りが見え始める。 |
「仕事は、常に社員の皆で考えます。新しい事業を立ち上げるたびに社員が成長しているのが分かるんです。特にこの2,3年、能力の向上が実に著しい。ネット販売はお客様の反応がダイレクトで聞けるのが刺激的です。メニューは社員が喧々諤々、試行錯誤の繰り返しで開発しておりますが、自分の考えたメニューが全国数万人の口に渡り『美味い、不味い』のリアクションが即座に聞ける、ということに感動を覚えるようです。また、この商売は特に女性に活躍いただける仕事だと思います」
環境に優しい“お弁当”
後藤社長に、今後の展開について聞いてみた。「特注弁当は、来年4月までに全国展開をすべく現在準備を進めています。各地域ごとの特産物と旬の食材を活かし、特色のあるオリジナル弁当の開発に力を入れていきます。いくらマックが安いと言っても、マックばかり食べ続けるわけではないでしょう? 栄養が偏るし、仕事の能率も当然落ちる。とはいえ、『価格が安い』というのは最大の魅力であり、至上命題です」。少しでも安くて美味しい弁当を供給できるようにと、経営の合理化に余念がない。 さらに当社の特徴の一つは環境対策。容器は当日回収し再利用する。ネット予約による受注生産なので、食材ロスはほとんどない。「コンビニ弁当の廃棄ロスの話を聞くと、胸が痛みます。世界には10億人近くの人々が満足な栄養を取れていない。農家の方が一生懸命作ったものを無駄にはできませんよ。“道理”を無視した経営はいつか行き詰る。この仕事は、『健康』も『環境』もとても身近に考えることのできる仕事です」。持ち前の明るいキャラクターの中に、骨太な経営理念をしっかり感じることができる。 食料自給率が低迷する今、良質な「日本の野菜」を守るべく、将来は農家と直接契約し、安定した仕入を維持、確保すること。そして「団塊の世代」や高齢者向けに、地域のボランティアとも連携しながらお弁当の「個人販売」にも乗り出していくこと。現状に甘んじることなく、後藤社長は既に次の一手を考えている。 |
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インターネットの機能をフルに活かして、新たなマーケットを獲得するお弁当テレビ。このビジネスを成り立たせているのは、富士フーズ創立以来培った協力工場500社との信頼関係、決まった時間に顧客の元へ配送する物流業者の迅速、確実な仕事あってこそ。お互いが「Win‐Win」の関係になるよう、常にパートナーへの感謝、配慮を忘れない。
インターネットや携帯電話による注文が7割を占める“通販ビジネス”の全国売上高は、推定8兆円強(2008年度)と、既に百貨店やコンビニエンスストアを抜いた。今回の「お弁当テレビ」は、知恵と創意を凝らした新たな商品開発、そしてネットの機能と経営資源を最大限組み合わせることにより、従来のマーケットとは全く別の販路の道が開かれる、という何よりのモデルケースではないだろうか。