CO.HACHIOJI元気な企業インタビュー

第8回 (株)菊池製作所

ものづくりに必要なことは!”匠の技”

取材先 (株)菊池製作所(代表取締役 菊池功)

所在地 八王子市美山町2161-21

電話 042-651-7265

e-mail eigyobu1@kikuchiseisakusho.co.jp

URL www.kikuchiseisakusho.co.jp

 美山工業団地にある(株)菊池製作所

機械金属加工業といえば、切削なら切削、板金なら板金というように専門化していることが多い。その中でどんな加工分野にも対応できる’総合試作’企業として多品種少量生産を実現している会社がある。八王子の美山工業団地にある株式会社菊池製作所である。今回はその代表取締役菊池功(きくち いさお)さんに元気さの秘訣を伺った。

 

 

誇れるもの、それは広範囲な分野をカバーする”総合力”

メーカーは試作品をつくる際、必要な加工に応じて板金やプレス、プラスチック加工などそれぞれの専門業者に発注することが多い。しかし、菊池製作所は「総合試作企業」として、それらの加工をトータルに請け負う。その加工力は精密板金加工から、マグネシウム加工やMIM(メタルインジェクションモールド)まで10種以上に及び、いずれも高精度加工が可能である。
 
 
  こうした多種多様の加工に対応するには、相当の機械設備が必要になる。社としての負担は決して小さくない。が、「設計者は少しでも早く製品を見たいでしょう。それに応えるためには、一つの会社で全て賄うのが一番。だから、ここまで多分野にわたり投資をしている。こんな会社は日本の中でもうちだけでしょう」と菊池さんは自負している。こうした試作品にかける思いがあるからこそ、競争の激しい製造業の中で菊池製作所は独特のポジションに立てるのだろう。
 
 
 
 

 

独自技術”ブロックビルド工法”による、短納期の実現

菊池製作所のもう1つの強みは、多種多様の加工を「短納期でこなす」ことである。これも激しい競争の中で差別化を図るためには欠かせない。菊池製作所ではモールド成形に独自技術のブロックビルド工法を導入し、極めて短納期で試作品を製造することを可能としている。

ブロックビルド工法とは、その名のとおり、1つの型をいくつかの部分(ブロック)に分割して設計・加工し、最後に各パーツを接着することでモールド成型用の金型を完成する。イメージはおもちゃのブロック細工だ。通常、一つの型の製造にはそれなりの時間と掛かり切りの機械が必要になる。稼働効率やコストパフォーマンスはいいとは言えない。何より、お客様を待たせてしまう。ブロックビルド工法ならば複数の機械による並行作業が可能になり、それらの問題をクリアできる。こうした柔軟な発想が、菊池製作所オリジナルの”多品種少量短納期生産”を可能にしているのである。

 

 

 

ものづくりは、やはり長年の経験がものをいう

ものづくりの過程は、時代の鏡でもある。かつては図面を見ながら製造していたが、今やITの時代。製造機械もNC(数値制御)化され、図面データを入力して製造するようになっている。そうなると、「製造分野はどんどん中国に持っていかれてしまうのでは?」という素朴な疑問が沸いてくる。
 

しかし、菊池さんは「ものづくりに必要なことは、データに基づいたマニュアルどおりの製造ではなく、長年の経験からくる”匠の技”が必要である」と自信をもって語った。ここに、単純なライン製造とは異なるという、自社製品に対する自信が伺えた。

 
 
 
 

 
 

 

オリジナル製品の開発へ

試作品メーカーとしての強みがある一方で、試作はやはり下請けという思いがあることも事実である。そんな思いから菊池さんは、オリジナル製品を持つことにも情熱を燃やしている。かつてアメリカに渡って病気治療を受けた経験から、日本の”対処療法”から”予防医療”への転換の必要性を感じた菊池さんは、オリジナル製品である酸素濃縮器を開発した。余談であるが、この酸素濃縮器は読売巨人軍の桑田投手も購入したそうである。

また、酸素濃縮器の効果を目に見える形でという思いから、血中酸素濃度測定器を大手企業との共同研究により製品化にこぎつけたのである。ここにも、菊池さんのものづくりに対する熱意と行動力が発揮されている。

 

 

 

産学連携によって、社員が”夢”を持ってくれたのは最大の収穫

菊池製作所は、産学連携にも熱心だ。4年前から八王子市内にある東京工科大学の一柳(いちりゅう)教授の研究室と共同開発を行なっている。とかく企業から見ると大学の敷居が高いと思われがちだが、菊池さんは持ち前の行動力で自ら大学を訪ね、産学連携が実現した。この連携によって菊池製作所に就職した学生が、5人もいるとのこと。身近なところに”元気な”企業があることに気付く良いきっかけになったのだろう。
 「産学連携のメリットは?」との質問に、「社員が自分の会社に”夢”を持ってくれた事が最大の収穫」と菊池さんは語る。まだ産学連携によって、マーケットに投入できた製品は無いが、さらに可能性が広がった菊池製作所に”夢”を感じた社員が、より力を発揮していく。今後、菊池製作所の更なる飛躍が期待できそうだ。
 

 
編集後記
 
鳥のさえずりが聞こえるほどの大変めぐまれた環境の中で日々ものづくりが行なわれている美山工業団地の中に、菊池製作所は立地している。会社に入って、まず驚いたのは、社長自信がきさくに社員とコミュニケーションをとりながら仕事をしている風景だ。社員の方に聞いてみると、菊池社長は社長室にこもるのでなく、いつも社員と同じ目線で仕事をしているとのことで、就業環境もすばらしいと感じた。
中に入って、数々の製品を見ていると、スキューバダイビング用の酸素ボンベがあった。濃縮酸素を使ったもので、コンパクトかつ軽量で、従来のボンベと同等の時間潜水できるそうだ。デザインもオシャレで、相当ウケルと思ったが、業界規制で販売が難しいとのこと。消費者にとってより良い製品でも、使うことができないとは非常にもどかしく感じる。
 
(取材日を記入2002年6月7日)