CO.HACHIOJI元気な企業インタビュー

第42回 ビデオトロン(株)

『技術者のわがまま』こそが飛躍の原点!

取材先 ビデオトロン(株)(代表取締役 廣濵 勉)

所在地 八王子市千人町2-17-16

電話 042-666-6311

e-mail info@videotron.co.jp

URL www.videotron.co.jp/

代表取締役 廣濵 勉さん

「字幕スーパー」。かつては外国のTVドラマや映画の“読む通訳”がもっぱらの役割だった。ところが、この「字幕スーパー」、最近は色々な使われ方があり、映像、音声に次ぐ第3のツールとして人々に「感動」を与える手段となっているのだ。普段何気なく見ているこの「字幕スーパー」や「テロップ」、実は「すごい」の一語につきる技術で固められた機器が作り出している。そして、八王子の閑静な住宅街にあるビデオトロンこそがこの機械を生み出しているのである。

 今回は映像業界に革命を落としたビデオトロン(株)に訪れ、代表取締役の廣濵 勉(ひろはま つとむ)さんから興味深い話を伺った。

 

 

独自製品で業界を席巻するビデオトロン

ビデオトロンは映像機器・電子応用機器の製造と関連ソフトウェアの開発・販売を行っている。オリジナル商品を主力とする研究開発型企業で、その製品は大手映像プロダクションがこぞって採用している。特に映像機器の文字スーパー装置は日本のNHKや民放各社はもちろん、各国で採用されており、例えば韓国や台湾では「ビデオトロン」が文字スーパー装置の代名詞になっているそうだ。
 

最近ではハイビジョン対応の画期的なスイッチャーの開発に成功。韓国の民間放送局で採用され、韓国内22局で利用されるという、大きなビジネスに発展しているとのことだ。ビデオトロンは八王子の住宅街発ワールドワイド企業となっているのだ。

 

新製品の「ハイビジョン・ビデオ・スイッチャーVS90HD」。最大3入力のハイビジョン映像信号をA/Bロールスイッチングできる1Uサイズの小型、軽量のスイッチャー

 
 
 
 

 

『技術者のわがまま』が躍進の原点!

閑静な住宅街にあるビデオトロンの立派な社屋

 ビデオトロンの創業は1972年、廣濵社長が30歳の時だった。廣濵社長はもともと大手通信機器メーカーに勤めていたが、5名の仲間と思い切って創業したそうだ。スピンアウトの理由は「技術者のわがまま」。つまり、廣濵社長は「技術者には『やりたいことをやりたい』『自分の技術を活かせる場所が欲しい』という欲求があります。それを満たすには大きい会社ではダメだと思った」のである。そして、それを実行に移せる人だったのである。  とは言え、創業したての会社が「やりたいことをやって」いるだけではやっていけない。いきおい、当初の仕事は大企業の開発の“手伝い”が主軸になった。ただし、その“手伝い”とは、例えばVHSやP社のレーザーディスクの初期開発だったというから、創業当初からビデオトロンの技術力がいかに群を抜いていたかは容易に推測できるだろう。
 

 

 

新たなテクノロジーを我が手へ! 研究開発型企業の発進!

ところで、創業して間もなくの頃、世の中でも画期的な技術が登場していた。インテル社が発表した世界初のワンチップマイコン4004(4bit)である。このニュースに「すごい時代が来る!」と直感した廣濵社長はどの企業よりも早くそのチップを購入し、全く新しい映像の処理回路開発に挑戦し始めた。この大手よりも早い着想と着手が、後々の映像機器業界でのビデオトロンの優位に大きくつながったのだ。
 

1980年頃からはその挑戦は自社製品の製造へと発展する。そして、当時難技術とされていた「映像の絵の中に文字を埋め込む(いわゆるテロップ)」機器の開発に成功する。この成功によりビデオトロンの名はたちまち業界に広がり、放送局や大手映像プロダクションからの注文が殺到。ビデオトロンは研究開発型企業として完全に自立を果たす。「技術者のわがまま」を貫き、新しいテクノロジーを恐れず、ひたすら「やりたいことやって」きたビデオトロンの挑戦が一気に花開いた瞬間である。

笑顔で創業秘話を語る廣濵社長。確かな技術と時代を先取るヨミで、ビデオトロンを業界の躍進企業に仕立てた

 

 
 

 

徹底的顧客満足の追求が次へつながって行く!

自社のIT武装ぶりを披露する廣濵社長。社内はペーパーレスであり、ファイルメーカーを活用したオリジナルソフトで、全社員が情報を共有化できるようになっている。

それにしても、創業したての小さな企業がよく一線級の企業に登りつめることができたものだと、記者などは思ってしまうのだが、廣濵社長に言わせれば、「顧客のニーズにあった製品開発ができたから」に尽きるということらしい。技術的にはテロップの実現が難しくても、お客は確実にテロップ装置を必要としている。「それなら」と、その「困難」を確かな技術で実現させる。すると顧客はビデオトロンの技術力を信用し、「テロップ装置が大丈夫なら、スイッチャーも大丈夫だろう」と次のテーマを与えてくれる。ビデオトロンはそのテーマの実現へ向けて次の開発へと進むことができる。ビデオトロンは、この顧客とのキャッチボールの繰返しで発展してきた会社なのである。  それは、顧客の望む仕様に完全対応することだけを意味しない。ビデオトロンは「1の要望があったら、2~3を返す」ことを実践している。つまり、顧客の希望以上の仕様に仕上げて製品を提供しているのである。「お客様が最終製品にどういう機能を望まれているのかを分析し、その実現には仕様以上のものが必要であれば、技術者としては当然、その部分を付加できなくてはなりません」と廣濵社長。顧客のニーズを徹底的に引き出す、この「徹底した顧客満足」がビデオトロンを次の発展につなげてきているのだ。

なんと、我々の取材予定もスケジュール表に明記されていた!

 

 

 

『映像の道具屋』は年中無休!

昨今の放送のデジタル化・ハイビジョン化によりビデオトロンは今、追い風を受けている。しかし廣濵社長はさらにその先を見越しており、来る「映像の光化」時代に対応する機器(伝送経路だけではなく、プロセス全てが電気から光に移行されている機器)の開発を視野に入れている。常に顧客のニーズを計り、それに付加価値をつけながら全力で対応していくビデオトロンの手法は健在だ。
 

社名のビデオトロン(videotron)は映像(video)と装置や道具という意味のtronを組み合わせた造語であり、社名には「お客様の映像製作のお手伝いができる道具屋」になるという狙いが託されている。こんな「映像の道具屋」がある限り不便な点は次々と改善され、我々の身近にある映像環境はどんどん快適なものになっていくことだろう。

 

ビデオトロンのHPトップにあるメッセージ。「映像の道具屋」になるための願いが託されている!

 
編集後記
 
「我々はまたまたすごい会社を訪問してしまった・・・ 取材後の率直な感想だ。テレビという影響力のあるメディアにおいて、今や「字幕スーパー」や「テロップ」なくしては番組は成り立たない。革命的にテレビ文化を変えた「字幕スーパー」や「テロップ」を操る装置が我々の身近な企業によって造られており、さらにNHKや民放各社はもちろん、韓国や台湾でもこぞって採用されるほどのハイ・クオリティーなモノを供給している事実は、やはり「すごい会社だ」と驚かざるを得ない。でもビデオトロンがそこまでできるのは、「技術者のわがまま」を追求することで自己の技術力を上げていき、顧客の要望以上の仕様を提供することで顧客の信用力を勝ち取っていく・・・・ という「ものづくり」であれば誰もがあこがれる理想的な流れを地で行っているからなのだ。本当にすごいのは実はこの点なのかもしれない。
 

ところで、ビデオトロンは現在ISO9001の認証取得に向けて頑張っているが、実はこれはサイバーシルクロード八王子「ビジネスお助け隊」が主催した「ISO勉強会」に廣濵社長が参加したことがきっかけとなったのだ。コンサルタントには勉強会の時に指導を担当した「ビジネスお助け隊」登録アドバイザーの鈴木さんが就いている。そして、本年6月から開始して年内に取得するという高い目標のもと、全社員とコンサルタントが一丸となってシャカリキに頑張っている。取得スピードもさることながら、「品質マネジメントシステムの簡素化」と「ネットワークシステムによる情報共有化」というISOにおいては新しい試みにも挑戦しており、成功すれば「前例の無いこと」になるそうだ。ビデオトロンならきっとやり通すことだろう! 楽しみだ。

 
(取材日2003年3月25日)