(株)ガリレオ バックナンバー

より安く、より高付加価値へ

取材先 (株)ガリレオ( 代表取締役社長 佐藤弘和)

所在地 八王子市横山町5-15八王子トーセイビル8階

電話 042-639-0510

e-mail galileo@galileo-1.co.jp

URL www.galileo-1.co.jp

 防犯業界の躍進企業ガリレオは工場を持たないファブレスメーカーだ。
小売店の事業者にとって最大の敵は「万引き」である。とある大手フランチャイズ書店グループでは、万引きによる年間の被害総額がチェーン書店1店舗分の売上と同等の金額に及ぶとも聞く。 この悪質な犯罪に最新の防犯機器で対抗している企業が株式会社ガリレオである。ガリレオは業界では後発隊ながら、独自の技術で質の高い防犯機器を安価に提供することに成功しており、「防犯機器=高価」が当たり前だった防犯業界の常識を覆したパワーのある企業だ。今回は代表取締役社長の杉山 雅美(すぎやま まさみ)さんを訪ね、色々なお話を伺った。

 

 

 

大手の出来ない商品を!

最近の書店やCDショップ等では、防犯カメラはもちろん、入口に万引き防止用のゲートを設置しているところが多い。ガリレオはこうした防犯機器の開発製造と販売を行っている。特に万引き防止機については持ち前の技術開発力を活かし、高品質な機器を同業他社の半値程度の価格で提供することを実現している。杉山さんによれば「今までが高すぎただけ。努力すればここまで下げてユーザーに提供できる」のであり、「商店にとって万引きは本来は無いはずのもの。そんな“無いもの”のためにかけるコストは低くあるべきでしょう。だから、防犯機器は安くなくては意味がない」のだからということになる。
  防犯業界の歴史は15年ほどであり、関連業者は約300社。ガリレオがこの業界に参入したのは平成9年で新参の部類に入るが、ユーザーの立場に立った技術開発力で参入以来、その万引き防止機が大手古本チェーン店やドラッグストア等で次々と採用され、今や業界で主導権を握るほどの成長を遂げている。
 

 

下請け会社ゆえ経験した予期せぬ事件… 失敗を次への一歩へ!

杉山さんはあるメーカーで設計技術から経営管理までオールラウンドに業務を経験した経歴を持つ。ガリレオを創業したのは平成3年。当初は自動化装置や半導体製造装置の受託開発を行っていたが、オリンパスや横川電機等の大手企業から直接発注を受けるほどその技術力は折り紙付きだった。 しかし、開発だけでは人件費が償却できる程度の利益しか上がらない。そこで、平成5年頃からは開発から量産まで一括で請け負えるような仕事を模索し始めた。そんな折、ある業者からゲームセンター用ゲーム機製造の引き合いがきた。杉山さんは、開発費の値引きと引き換えに量産までガリレオが引き受けることを業者に約束させてその仕事を受託、これで開発から量産まで請け負うガリレオの新しいモデルができるはずだった。  ところが全く予期せぬ結末が待っていた。少ない予算で何とか試作品を完成させたにもかかわらず、開発が終わったとたん量産の約束が一方的に破棄され、ノウハウだけ持っていかれてしまったのだ。「下請け企業にはよくあること」(杉山さん)だが、ガリレオにとっては今後の展開を再考せざるを得ない出来事だった。この事件をきっかけに「結局下請けでいる限り立場は常に弱く、儲かる話もない」ことを杉山さんは痛感。ガリレオは“脱下請け”に向けて動き始めた。

 

 

“脱下請”に向けて・・・

杉山さんは徹底的に研究を重ね、下請けを脱するためにガリレオ独自のオリジナル製品を作ることを決意した。ここで普通の企業であればオリジナル製品の開発に絞って経営資源を投下していくところだが、杉山さんは違った。「オリジナルものを製造してもそれが売れないためになかなか業態転換ができない中小事業者は多い」ことに気づき、開発も然る事ながら、「それと同等レベルに重要なのが製品を売り込む営業力・販売力である」との結論に達したのだ。
  そこで杉山さんはガリレオの営業力強化に乗り出し、平成6年頃からモノ売りの営業マンの重点採用始めた。「せっかくオリジナル製品があっても、それを市場に売り込むことができなければ意味がありません。“脱下請け”には営業力と販売力の強化が必要なんです」。単なる技術畑だけではなく、営業管理まで経験した杉山さんだからこそ到達した領域だろう。

防犯機器は安く製造できる! 新たな分野への進出!

杉山さんはオリジナル製品の開発に向けたマーケティングも怠らなかった。世の中は様々な犯罪が増加傾向にある。したがって今後は防犯関連の業界にニーズが高まるだろう・・・と防犯業界を1つの狙い目と睨んでいた。そんな時レンタルビデオショップでたまたま万引き防止機を見かける。「ひょっとしたら・・・」と直感的にひらめくものがあった。 早速調査をすると、当時の万引き防止機は米国製の輸入物が主流であり、単価は140万円ほど。普通の小売店業者には簡単に購入できないものだった。ところが杉山さんが試しに自分で購入してバラバラに分解してみると、単価はかなり安いものであることが判明。杉山さんは「自社で製品化すれば格安の万引き防止機が製造できる」と確信したそうだ。そこで「ガリレオのオリジナル製品は防犯機器」とフォーカスし、平成9年にこの業界へ参入。持ち前の技術力と下請時代に鍛えてきたコスト競争力で低価格の万引き防止機や防犯カメラを開発し、それを強化されたガリレオの営業部隊が売り込む。
 このワン・ツー攻撃で瞬く間に業界を席巻していった。杉山さんの見事な作戦勝ちであった。

 

編集後記

この社長はスゴイ・・・!杉山社長に取材しながらただただ圧倒されてしまった。
 時代が望むものへのヨミ、「防犯機器=安価であるべき」というユーザーの立場に立った視点、オリジナル製品完成までの行動力、「“脱下請”=営業力強化」 という決断、そして好調な時こそ次の展開を考える精神・・・。
 これら全てが聞く者に有無を言わさないほどの説得力があり、「な・・・なるほど!」と思わざるを得ない。変な話だが、取材に伺ったはずなのにそれ以上に「勉強をさせて頂いた」というのが実感である。これから起業したい人や新たな展開を模索している事業者は、杉山社長のお話をお聞きになると何かを得る事ができるのではないだろうか。
 ガリレオは「地域に根ざした防犯ショップ」を目指し、安価な防犯機器の提供だけに止まらず、「セキュリティショップSOS」での無料防犯相談や防犯対策を促す「SOSニュース」の発行、市内の小学校における無料の防犯セミナー等を積極的に開催している。こうした活動が社会的にも必要度が高い業態として高く評価されるようになり、東京都庁から濱渦副知事が視察に来訪されたそうだ。ガリレオのような会社が八王子にあることを嬉しく思う。
(取材日2002年10月17日)
(記事修正2013年10月30日)