CO.HACHIOJI元気な企業インタビュー
第58回 日本ブレーキ工業(株)
技術を生かし社会的貢献企業を目指して!
取材先 日本ブレーキ工業(株)(代表取締役社長 吉川弘泰)
所在地 八王子市中野上町4-29-1
電話 042-627-8311
e-mail info@japan-brake.co.jp
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普段何気なく利用している車や鉄道の移動交通。現在、日常の生活において車や鉄道は、きってはきれない存在になっている。ものを運び、人を運び、時には快適な空間として一躍を担っている車を構成している部品に、なくてはならない重要なもの。そう”ブレーキシステム”がそのひとつに挙げられる。ブレーキは、高性能や高品質が求められるとことは当然のことながら、人の命を預かるために高い信頼性が要求される。そのブレーキの開発において、着実に歴史を更新している会社が日本ブレーキ工業株式会社なのである。今回は、同社代表取締役社長である奥田純一(おくだ じゅんいち)さんを訪ね、お話を伺った。 |
日本初・世界初のブレーキパッド開発に成功
日本ブレーキ工業株式会社はその名のとおり、摩擦材とブレーキシステムを開発・製造している会社である。もともとブレーキを専門として製造している大きな会社(当時3社位)が少なかった時代、あるブレーキ製造会社から、「自分達が思う摩擦材をつくりたい」という意識を持った6人が独立し設立した。八王子工場は繊維関係の工場跡地に同年に設立したのであるが、設立当時は開発から製造まで一貫してこの地でおこなっていた。昭和38年には日本で初めて鉄道車輌用ディスクブレーキ用のパッドの開発に成功。4年後には二輪車では世界初のブレーキパッドの開発・実用化にも成功。今日のディスクブレーキ時代の礎を築いていった。このことだけが要因ではないが、その後、大手自動車メーカーとの取引が増え、工場が手狭になったこと、また周囲に住宅があること等を考慮して、八王子工場では開発・試作専門とし、製造については千葉・福島・広島などの日本各地に工場を建設し行うようになっていったのである。現在、日本ブレーキの製品は、日本のブレーキ市場の中で約2割を占めている。
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軽量化・小型化の波の中で
現在、家電や携帯電話など機能を充実しながらも、軽量化・小型化の波が押し寄せている。そのような中、大手自動車メーカーからのブレーキのディスクパッドに対しても同様で、自動車の重量を軽くするために、機能は保ち、小さくて軽いものが求められている。しかしながら、ブレーキは、ものとものとを接触させて摩擦により効かせるのに、小さいものを求められるということは摩擦面を減少するという、相反することになってしまう。言い換えると摩擦面積が小さくとも、摩擦係数の高い素材開発が求められるのである。この技術的に難しい要求に応えるのが日本ブレーキの得意とするところなのである。ブレーキパッドの製造には樹脂を使用し、20種類の素材を混ぜ合わせる。「どのようなものをどのように配合するのかがポイント」と奥田さんは語るが、そこに日本ブレーキの技術が生かされているのである。また、ブレーキの効きに温度条件によって差異がでないよう、暑い時・寒い時を設定し、自社で試験・検査を行っているのも日本ブレーキが製品に対し責任を持っている証である。 | |
グローバル化への対応と産学連携
「今後は自動車メーカーのグローバル化に対応していかなければならない」今後の展開に対する奥田さん社長の言葉だ。奥田さんは昨年6月に社長に就任したばかりであるが、色々なことに挑戦している。
日本ブレーキは、アメリカ・インドに合弁会社、タイに子会社、更に今年6月には中国に子会社を設立し、来年秋には操業を開始する予定である。また、海外進出にあたり、「語学の研修は勿論実施しているが、その国の文化を理解するためにその国の歴史を学ぶ研修の場も設けていきたい。」と奥田さんは語る。「その国の文化を理解しなければ現場でうまくやっていけないし、指示もできないから」これが導入する理由だ。また、「摩擦材を核としてイノベーションを果たしていくこと」を模索している奥田さんは大学との連携を積極的に行っていきたいとも考えている。「今まではメーカー側のニーズによって殆ど製品開発が行われてきたが、メーカーも行き詰まり感が見られるので、そこに提案していくためにも大学の先生の知恵を借りていきたい」ということから日本ブレーキでは、アンテナを高く張り色々な先生と接触を試みた。なかなか製品までたどり着く先生が見つからなく時間がかかったが、現在ある大学の先生と技術開発の話がまとまりつつあり、「大いに期待している」そうだ。
環境に優しく社会的貢献を目指して
日本ブレーキ工業では、単にものをつくるだけでなく、環境や社会的貢献も重要視している。昭和56年に当時ディスクパッドの素材で主流であったアスベストにかわり、スチールファイバー材によるパッドをいち早く開発。「無公害で高性能の製品を生み出し、世界の自動車業界から注目された」のはまさに、会社としての方向性によって生み出されたものなのである。また、前述した軽量なブレーキパッドの開発も「車の重量が軽くなり、燃費が向上すれば排出ガスの減少につながるというように、新しい製品開発が環境負荷を軽減することは社会的にも意義がある」と奥田さんは熱く語る。 そして、社会的貢献。日本ではまだまだ認知度は低いが欧米では企業評価の大きなポイントになっている。「企業の存在意義というのは、社会から掛け離れたところでは成り立たない。その存在意義を明確にしていけばおのずとCSRはついていくものであるので、もう一度原点に返って当社の存在意義は何かを明確化し、経営に取り組んでいきたい。」と結んだ奥田さんが率いる日本ブレーキはこれからも世界初・日本初の製品を生み出していくのだろう。 |
編集後記
日本ブレーキは学生のインターンシップを積極的にとりいれたり、JR八王子駅にある工業製品展示ブースにも出展している。それは、八王子にある多くの大学から、社員が来て欲しいとのことから行っているそうだ。「なかなか、地味な会社なので入社まではいかないが、しかし、入社した社員は会社の近隣に住んでいるのです」と奥田社長は笑みを浮かべながら話す。単に利益を追求するのではなく、環境や社会的貢献を目指しながら、世界初・日本初の製品を生み出している企業が八王子にあったことを嬉しく思う。そんな社風からか忙しい中、懇切丁寧な説明いただき、社長をはじめとする社員の皆様の暖かさを感じた今回の取材であった。
(取材日2004年7月16日)