CO.HACHIOJI元気な企業インタビュー
第86回 (有)TAPS (タップス)
『あらゆる造形美術・空間演出のエキスパート』
取材先 (有)TAPS (タップス) (代表取締役 高橋 雅文)
所在地 東京都八王子市叶谷町1592
電 話 042-622-9585
F A X 042-622-9584
U R L www.taps-co.com/
誰もが訪れる遊園地やゲームセンターなどのアミューズメントパーク。そこでは日常とは違う別世界の時間を過ごすことができる。たとえば物語に出てくるようなお城やSFで活躍するロボットや宇宙人など、まさに普段の生活では決して見ることのできない魅了的なものに出会うことができる。 では、そんな『夢の世界』はどのようにして作られているのだろうか? 今回は、そんな特殊造形と呼ばれる『夢の世界』を作り続けてきた造形美術・空間美術のスペシャリスト(有)TAPS代表取締役の高橋雅文さんにお話を伺った。 |
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夢を現実にする仕事
「ユーザーからいただいた絵(スケッチ)を現実にすることが仕事です」 そう自信を持って語る高橋さん。もともと造形大学の彫刻科出身で学生時代からものを作ることが大好きだったようだ。「大学を卒業して普通に就職し、趣味でものづくりを続けるのではなく、自分のやりたいことをやってそれでお金を稼げたら…そう考えていました」 初めは大変な生活だったが少しずつ仕事は増えていった。時代は1980年代。様々なディスプレイが必要とされた時期だった。小さなウインドウディスプレイから始まり、その後だんだんと大きなディスプレイも手掛けるようになった。 一番大きなものでは10メートルを超える作品を作ることもあったとか。 そのまま依頼を受けては様々なものを作り続けてきた。そして2004年とうとう(有)TAPSを立ちあげた。 「私たちのやることは裏方で表には出にくい職業です。表だって評価はされにくい。でも、ものを作るのが好きな人たちが集まってこのような仕事ができることはとても楽しいです」 自分の好きなことが仕事になる。それはどれほど素晴らしいことだろう。 |
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大きなものを作る技術
特殊造形とはテーマパークのキャラクター・アトラクション、映画・テレビのセット、デパートのショーウィンドウ、イベントの展示物などのことである。そのほかにも劇場や映画で使われる大道具や小道具の製作など様々なものを意味している。 (有)TAPSの主な仕事はユーザーから注文されたデザインを立体にすることだ。つまり、2Dの世界を3Dの世界へと変換することである。 まず、お客様から注文、(デザイン)を受け取ると、そこから小さな模型を製作、そして3D スキャンを用いて内部の設計を行う。その後模型とスキャンをもとにしてフレームの設計、中に組み込むメカニズムを製作し原型を作る。 その原型からFRPなどの素材を用いて実際の大きな作品を作り上げる。最後にメカニズムの取り付け、塗装やエイジング(古く見せる加工)などを行い完成だ。 大きな特徴は3Dを活用してデザインから模型を作り出している点。そのため、非常にデザインに近い造形を生み出すことができる。 「空間を活用するものならどんなことでも出来ます」 (有)TAPSがこれまで積み上げてきた実績に裏打ちされた自信がそこには垣間見えた。 |
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特殊造形のポイント
八王子で特殊造形を扱い続け、確固たる地位を築いた高橋さんに特殊造形を扱う中で気を付けている点や、必要なことについて尋ねた。 「まず、物理的に大きなスペースが必要です。7~8メートルクラスのものを作成することもありますので、作業場は裏手の家屋も含めて3か所にあります」 大きな造形物の作成にこのような作業場は欠かせない。 また、ただ与えられたデザインをそのまま立体に起こせばよいというものではない。実際に立体化すると予期せぬ問題や改善点が見つかることも多い。そのため、常にユーザーに対してデザインの提案をすることも重要とのこと。 「みんな何かを作ることが大好きな人たちが集まっています。社員は優秀な方たちばかりです」 室内には造形関連の本以外にも写真集やプラモデル、3Dの解説書など多岐にわたり、常に新しい知識を蓄えていることがうかがわれる。 |
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「創る」ことの楽しさ
これまでにさまざまなものを作り上げてきた高橋さん。「ものを作る」ことの魅力はどこにあるのだろうか。「なにもない『無』から『有』を作り出すことが一番の魅力です。身一つあれば材料だけでどんなものでも作り出すことができますから」 特殊造形はその特性上毎回注文されるものが違うため、常時はじめての仕事になる。単品物が多く、様々な技術を要求されるため、一つとして同じ仕事はない。 そのため絶えず新しい感覚で仕事に取り組むことができるのも大きな魅力だ。 「毎回違う仕事をする、ということは毎回0から新しく考え直さなければならないということです。毎回違う仕事になりますので全く飽きることがありません」 注文によっては要求される技術が非常に多く、そのため機械などを活用するよりは、むしろ自分の手で作るほうが美しく仕上げることができる場合も多いとのこと。 「造形美術は一点集中型の職人芸というよりも、あらゆる技術に秀でている必要があります。いつも新しい感覚が必要な仕事なので、とてもやりがいのある仕事です」 造形美術一筋30年。高橋さんは今日も新しい造形美術を生み出し続けている。 |
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編集後記
今回取材した高橋さんは八王子で仕事を続けて30年。これまで実施してきた事業の中には大型のレジャーパークや、特撮で使われる怪獣の作成をしたことも。
今までテレビで見たことのあるセットや大道具、小道具を作る会社が八王子にあることには驚かされた。
高橋さんの目は輝いており、本気でこの仕事が大好きだ、という気持ちが伝わってきた。
これからもあっと驚くような美術作品で私たちの目を驚かせてほしい。
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(取材日 2011年6月6日)